文様の猪目はイノシシの目の形に似ていません。そもそもイノシシの目なんてちっさく隠れていてどんな形なのか分からないし、近くで良く見ても他の動物の目と比べて特徴的な形をしているわけでもありません。ではなぜ「猪目」と言うのか。おそらく、縄目、籠目などで縄や籠の「文様」、「マーク」と言う意味で「目」が使われていますが、これらと同じようにイノシシの文様・マークと言う意味なのではないでしょうか。
では、なぜイノシシの文様であるのかと言うと、まさにイノシシの一番の特徴的な形状の鼻の形が猪目と非常に似ているのです。なので、この形を表す呼び名を「猪目」としたのでしょう。
イノシシの鼻の形は、「猪目」と言う呼び名を使い出した当時はイノシシの象徴的な形として誰にでも分かったのではないでしょうか。しかし、現代ではイノシシはそれほど身近な存在ではなくなってしまいました。他にゾウだのキリンだのパンダだのたくさんの動物を知ることになるため、イノシシってこういうものと言う認識がありません。
なので、現代では説明が必要となったのですが、敢えて言葉にして説明するとなったとき、これはイノシシの「鼻」です、とは言い難かったのでしょう。なぜなら、いわゆる豚の鼻と同じで、人間の顔で上向きの鼻を不細工なものとして考えているからです。それを権威を持たせたい所でデザインとして使っていると説明したくはないのでしょう。
昔も「ぶたっぱな」が美醜を表すと言うことはあったと思いますが、それよりもイノシシ自体の存在感が大きく、イノシシの鼻の形=「ぶたっぱな」は美醜よりも、イノシシそのもののイメージとなってそれほどかっこ悪くははなかったのでしょう。それは現代のハートマークと大して変わらなかったのだと思います。しかし、現代ではイノシシの鼻の形をかっこ悪く感じ、権威に過度にへつらう風潮もあって「イノシシの鼻」と言えずに「目」としてしまっている、と言うことなのではないかと思います。
なお、あくまで「猪目」と呼ばれる形は、イノシシの鼻の形に似ているから「猪目」と名付けられただけで、イノシシ由来ではないと思います。なので、猪目をイノシシの「目」だとこじつけるぐらいなら「ハート」「逆ハート」型と呼ぶようにしたほうが良いのではないでしょうか。